来談者中心療法(クライアント中心療法)は、アメリカの心理学者カール・ロジャーズ(Carl Rogers)が提唱した心理療法で、クライアントの自己成長を促すことを目的としています。以下では、来談者中心療法の具体的なやり方を詳しく解説します。



基本的な前提と態度


来談者中心療法では、カウンセラー(セラピスト)はクライアントの自己実現を信じ、支援する立場にあります。そのために、次の3つの態度が特に重要とされています。



① 無条件の肯定的関心(Unconditional Positive Regard)


クライアントをありのままに受け入れ、評価せず、肯定的な関心を持つ。
クライアントの話す内容や価値観に対して否定的な反応をしない。
クライアントがどんな話をしても、安全で自由に表現できると感じられる環境を提供する。





② 共感的理解(Empathic Understanding)


クライアントの気持ちや考えを深く理解しようと努める。
単に言葉を聞くだけでなく、その背後にある感情や意味を理解する。
言葉だけでなく、表情や仕草、沈黙などにも注意を払う。







③ 自己一致(Genuineness, Congruence)


カウンセラー自身が偽りなく、本音でクライアントに向き合う。
役割を演じるのではなく、カウンセラー自身の真実の感情を持ちつつ関わる。
クライアントがカウンセラーを信頼できるよう、誠実で一貫した態度をとる。







セッションの進め方(実践方法)

① ラポール(信頼関係)の構築


初回のセッションでは、安心して話せる環境を作ることが大切。
クライアントがリラックスできるよう、温かく受容的な態度で接する。
クライアントが話したいことを自由に話せるように促す。





② クライアントの話を傾聴する


アクティブ・リスニング(積極的傾聴) を行う。
相槌を打つ(「うん」「なるほど」「それは大変でしたね」など)
繰り返し(「〇〇ということですね」)
感情の反映(「それはとても辛かったでしょうね」)
クライアントが話した内容を、そのままの形で受け止める。
「アドバイス」や「解決策の提示」は行わない。






③ クライアントの感情を言語化・明確化する


クライアントが話した内容を要約し、感情を明確化する。
例えば、クライアントが「最近仕事がしんどくて…」と言った場合、
「仕事がしんどいんですね。何が一番つらいと感じていますか?」
「お話を聞いていると、かなり疲れを感じているようですね」
クライアントが自分の気持ちに気づき、整理できるようにサポートする。







④ クライアントが自分自身で答えを見つけるのをサポートする


来談者中心療法では、カウンセラーが直接的な助言をせず、クライアントが自ら気づきを得ることを重視する。
クライアントが自分の内面を探りながら、問題に対する見方を変えたり、新しい気づきを得たりするよう促す。
「あなたならどうしたいですか?」「どんなことができそうですか?」といった質問を使い、クライアントの内的な探求を助ける。









⑤ セッションのまとめと振り返り


セッションの最後に、話した内容を簡単に振り返る。
「今日は〇〇についてお話ししましたね」
「お話ししてみて、どんな気持ちになりましたか?」
クライアントが自己理解を深められるようにサポートする。






注意点とポイント

① クライアントのペースを尊重する


クライアントが話したくないことを無理に聞き出さない。
クライアントが話しやすいテーマから進める。





② 長期的な視点を持つ


すぐに問題が解決するわけではなく、少しずつ変化が生まれる。
クライアントが自己成長するプロセスを見守ることが重要。






③ 価値観の押し付けをしない


カウンセラー自身の価値観をクライアントに押し付けない。
クライアントの価値観や選択を尊重する。







具体的な会話の例

① 受容と共感の例


クライアント: 「最近、仕事がうまくいかなくて、自信がなくなってきました。」
カウンセラー: 「仕事がうまくいかなくて、自信を失いかけているんですね。それは辛いですね。」





② 感情の明確化の例


クライアント: 「毎日が忙しくて、何のために頑張っているのかわからなくなります。」
カウンセラー: 「とても忙しくて、目的を見失いそうになっているんですね。その状況が続くと、どんな気持ちになりますか?」





③ クライアントの自己探求を促す例


クライアント: 「どうしたらいいのかわからないんです。」
カウンセラー: 「今の状況で、何か少しでも変えられそうなことはありますか?」










まとめ

来談者中心療法は、クライアントの自己成長を促すために、カウンセラーが受容的で共感的な態度を持ちながら、クライアントが自分自身を深く理解するのを助けるアプローチです。


アドバイスをするのではなく、「聴くこと」を重視し、クライアント自身が答えを見つけるのを支援します。

もし実践する場合は、まず 「無条件の肯定的関心」「共感的理解」「自己一致」 の3つの態度を意識しながら、クライアントの話にしっかり耳を傾けることが大切です。

投稿者 marry

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